おしりの病気
お尻の病気について
消化管の出口である肛門やおしり回りに病気を有している方は意外と多く、日本人の約3人に1人が悩みを抱えていると言われています。デリケートな部分でもあるため、なかなか人に相談できず、悩んでおられる方もいらっしゃいますが、放置すると危険な疾患が潜んでいることもありますから、注意が必要です。
排便したときに血が混じっている、肛門から何かがはみ出しているようだ、排便したのにまだ便が残っている気がする。そのような症状がみられたら、恥ずかしがって躊躇したりせず、早めの受診を心がけてください。
最も多いのは「痔」
肛門のお悩みでもっとも多いのは、長引く便秘や、肛門に過度のストレスをかけることによって発症する「痔」です。肛門が痛い、痒い、出血がある、残便感などの症状が見られたときは、恥ずかしがらず、専門の医療機関を受診するようにして下さい。
痔の予防方法
- 毎日お風呂に入り、お尻の血行を良くする(湯船にゆっくりとつかる)
- おしりを清潔にし、細菌が増殖しないようにする
- 便秘にならないようにする(便秘で硬くなった便は肛門を傷つけます)
- 下痢にならないようにする(肛門周囲が不潔になり、細菌感染リスクが増します)
- 適度な排便時間(便器に座っている姿勢は肛門に負担がかかります)
- 適度な運動を心がける(腸の動きが活発になり、排便が良くなります)
- 椅子などに長時間、座り続けないようにする
- 長時間、立ち続けないようにする
- 香辛料やアルコールなどの刺激物は控える(肛門がうっ血しやすくなります)
- 食物繊維を食べる(便が柔らかくなり、腸の蠕動も高まります)
- 身体を冷やさないようにする(血行が悪くなり、うっ血しやすくなります) など
主なおしりの病気
内痔核、外痔核、裂肛、肛門周囲膿瘍、痔瘻 など
内痔核とは
痔の疾患の中で最も多いのが「痔核(いぼ痔)」で、これは直腸下部や肛門の辺りの静脈が鬱血し、瘤のように腫れ上がった状態です。
このうち、直腸と肛門の境目より内側に生じたものを「内痔核」と呼びます。内痔核のできる場所には感覚神経が通っていないため、あまり痛みを伴わないまま病気が進行していきます。
さらに進行すると、肛門外に脱出(脱肛)し、さらに指で押し込んでも戻らなくなってしまいます。この状態になると、外科的処置が必要となります。
内痔核の治療法
- 保存療法
- 痔核の病巣の摘出や手術などを行わず、経口薬や注入軟膏、座薬などを使用して症状の軽減を目指す方法です。これと同時に、上述のような痔の予防方法(毎日の入浴)によって規則正しい排便を目指していきます。
- 硬化療法
- パオスクレー(フェノール入りのアーモンドオイル)を内痔核の部分に注射し、静脈叢を硬くする治療法であり、出血を止める効果があります。
- ゴム輪結紮法
- いぼ痔を鉗子で掴み、その根部を専用の輪ゴムで縛って壊死・脱落させる方法です。高齢者やハイリスク者、寝たきりの方にも行える治療法です。
- 手術療法
- 脱出した痔核を根元から専用のはさみで切り取ったり、PPHという自動吻合器を使って切除・縫合する手技です。
外痔核とは
痔核のうち、直腸と肛門の境目より外側に出来たものを「外痔核」と呼びます。強い痛みを伴うことが特徴であり、便通異常や飲酒、激しい運動、臀部に強い負担をかけることなどにより症状が悪化します。
通常は軟膏や座薬などを用いる薬物療法が行われますが、痛みが強い場合には痔核を切除する手術療法が必要となることもあります。手術の方法としては、局所麻酔下で小切開を加え、血栓を摘出する痔核血栓除去術が一般的です。これにより痛みは大幅に軽減されます。
裂肛(切れ痔)とは
肛門粘膜が切れてしまい、しみるような痛みが認められます。痛みによって肛門括約筋が締まって肛門が狭くなり、便通がさらに困難となって症状が悪化し、大量の出血に至ることもあります。
治療は、整腸薬や軟膏などで便通を調整する保存的治療が用いられます。
痔瘻(あな痔)とは
肛門周囲膿瘍が進行すると、肛門周囲に穴が開き、肛門内に瘻管(トンネルのようなもの)が出来てしまいます。これを「痔瘻」と呼びます。痔瘻には、皮下痔瘻(1型)、筋間痔瘻(2型)、坐骨直腸窩痔瘻(3型)、骨盤直腸窩痔瘻(4型)の4タイプがあります。
瘻管に沿って皮膚や粘膜を切開する方法、瘻管だけをくり抜く方法などがあり、日帰り手術で対応できる症例もあります。当クリニックでは術後は提携病院への入院をご案内しております。
- ジオン注入法(ALTA)とは
- 内痔核を切らず、1つの痔核に対して4ヵ所の注射を行う硬化療法のひとつです。流入血管を遮断し計4か所痔核内に硬化剤を注入し内痔核を退化させます。痛みもほとんどなく、日帰り手術として行うことも出来ます。